(完全ネタバレ)正義漢
タイトル:正義漢
著者:米澤穂信
評価:3.5
あらすじ:
①ホームに人身事故を告げるアナウンスが流れ、それを聞いている男の視点から物語がはじまる。「これほど迷惑をかける死に方があるだろうか」と男は考え、それを「育ちが悪かったせいに違いない」と強引に貶める。男はホームから一部始終を見つめているが、その時、ホームにある女を見つけた。
②女はメモ帳を取り出し何かを書き付け、携帯電話で何かを撮影しようとしている。次にボイスレコーダーまで取り出した。女はホームのすれすれで一連の動作を行い、駅員に注意まで受けている。だが女はボイスレコーダーに向って「事件記録」と声をはりあげており、それが男は気にかかった。人身事故ではないのか。
③男は女に近付く。女はやはり「事件」としてボイスレコーダーに記録を喋っている。女はゆっくりと振り返り、「人を線路に突き落とした感想はいかがですか?」と男に語りかけた。そして、後ろから別の人間の手が触れた。
④女、太刀洗と知り合いのカメラマンが喫茶店で向かい合っている。太刀洗はホームの中頃で事件が起きた事や被害者が随分と周りに迷惑をかける行動をとっていたことなどを根拠として殺人と推論し、自分が周囲に迷惑をかける行動を取り、犯人をおびき寄せていた事を種明かしする。
最後には、「フリ」で嬉々として事件記録を取っていた自分の写真を見つめ、太刀洗はこれが本当にフリだったと言い切れるのか自問自答し、読者に記者の業の深さを感じさせる。
小さな推論が積み重なり、最後に帰結していく手法はいつもの通り。殺人犯の独白でさえ整然としている。
にしても、太刀洗が記者として自問自答しなくなるのは一体いつなのか。