スナフキンママのライフスタイル

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(完全ネタバレ)書評:ナイフを失われた思い出の中に

タイトル:ナイフを失われた思い出の中に

著者:米澤穂信

評価:4.5

あらすじ:

①とある紳士が架空の町、浜倉駅に降り立つ。彼は一人の女性と駅で落ち合うが、彼の想像より女性は遥かに若く見えた。彼女こそは太刀洗真智。紳士のもう死んでしまった妹の友達で、彼女と会う事が外国から来た紳士の来日の目的の一つだった。

太刀洗真智はフリーライターになっていた。彼女はこの町の図書館で起きた火災と、16歳の少年が姪である3歳の女の子を刺し殺した事件を調べていた。事件は目撃者がおり、胸をはだけた女の子に馬乗りになる少年が目撃されていた。少年は捕まっていた。

③紳士は太刀洗真智にどうしてこんな仕事をしているのか尋ねる。太刀洗真智は少年の手記を取り出して読んだ。その足で太刀洗真智は歩道橋へ向かい、血の付いた子どもの服を見つけ、次に図書館へと向かい、凶器であるナイフを見つける。実は少年の書いた手記にはそのヒントが隠されていたのだ。

④結局犯人は少年の父親だった。犯人が姪の母親、自分の姉であると勘違いした少年は姉を守ろうとしていたのだった。途中、この手記を加工せず単なる目として公開した警察を手厳しく太刀洗真智は糾弾する。彼女は事実に「見方」を示すフェアな脳として、記者を続けているのだ。

 

感想:「さよなら妖精」の謎解き役、太刀洗真智見参。これが読みたくて初収録された短編を買ったほどです。彼女がフリーライターとは似合うような似合わないようなという所でしたが、その読者の葛藤を語り役の紳士が担ってくれ、最後まで疑惑の眼差しで太刀洗真智を見ています。最後、真実を見抜き覚悟を示した太刀洗真智と彼女へやっと心を開いた紳士とのやり取りが「さよなら妖精」を読んだ身からすると、じーんと来てしまいます。

また、不勉強のためか、示される「謎」の在り方もかなり斬新。

ただ、その謎の在り方と犯罪を犯したとされる少年の人物像が少しちぐはぐで、そこのみが少し残念でした。